保育現場で活躍されている保育士の皆さん、保育業界の今と未来をどう感じていますか?
保育園での事故や不適切保育がメディアで取り上げられ、「底辺職業」と揶揄され、SNSには保育への不満であふれている…。
保育業界が抱える課題は、若手保育士の未来を不安にし、保育学生の将来を曇らせ、やがては「保育士になりたい」と夢を持つ子どもたちまでいなくなってしまいかねません。
このままでいいのでしょうか…。
先日、『12人の学識者とともに考える保育の未来』出版記念トークセッションに参加しました。

加藤繁美先生・本田由紀先生・大宮勇雄先生をパネリストに迎え、
保育の現状と未来について熱く語られた場で、「保育の未来を明るくするために、現場のわたしたちは何をすべきか」を深く考えさせられました。
この記事では、
- 日本の保育の課題とは
- 保育士の適切な人数配置とは何か
- 保育の課題を解決するためには
この3点について、トークセッションでの3人のパネリストの言葉と私の考えを織り交ぜてお話しします。賛否あるかもしれませんが、ぜひ一緒に考えてみてください。
保育が必要とされる理由ー今の日本社会の課題とは

トークセッションで本田由紀先生が語られていたのは、日本社会全体が抱える大きな課題でした。その背景を知ることで、保育が果たす役割の大きさを改めて実感しました。
少子化・人口減少
保育士だからこそ肌で感じる問題が、少子化と人口現象です。
解決策の一つは、大人が安心して子どもを持てる環境づくり。
「子どもがいる未来を描けるか」
「子どもを授かっても大丈夫」と思えるかどうか…、
その安心感を社会に生み出す存在として、保育は欠かせない存在と言えるでしょう。
ジェンダーギャップ
「女性が家事・育児をするのが当たり前」
「母親が時短勤務するのが当たり前」という固定概念はいまだに根強く残っています。
女性がさまざまな制限を受けずに働き、暮らせるようにするためにも、保育の存在は必要不可欠なのです。
ただわたしは…、お父さんもお母さんも定時で仕事を終え、家族で過ごす時間を大切にした生活が理想。両親ともに会社の都合ではなく、子どもの生活リズムに合わせて働ける社会になってほしいと考えます。
貧困と格差
経済的に余裕のある世帯は子どもに多様な経験を与えられる一方、余裕のない家庭では親子の時間も十分に確保できない…。
保育は、保護者を孤立させず、親子の橋渡しをする存在として、格差の緩和にも大きな役割を担っています。
保育現場の課題ー日本保育が抱える3つの課題

保育は、日本社会が抱える課題を改善していく上で決して失ってはいけない大切な分野です。
パネリストの加藤繁美先生は、そんな重要な役割を担う保育が、いま抱えている課題について語ってくださいました。
ここでは、わたしの経験と交えながらお伝えしていきます。
【課題①】保育が全世帯に届いていない
「待機児童」という言葉を、最近はあまり耳にしなくなったと思いませんか?子ども家庭庁の調査でも、待機児童は減少傾向とされています。
【子ども家庭庁】保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)
しかし、その統計には以下のケースが含まれてません。
- 保護者が育休を延長しているケース
- 特定の園のみを希望しているケース
- 地方単独事業を利用しているケース
- 求職活動をしていないケース
⚠️わたしの経験でも、以下のケースを見たことがあります。
シングルで頼れる人がおらず、求職活動できない保護者
保育園に落ち、やむを得ず育休を延長した保護者
同居の祖父母がいるから審査が通らなかった保護者
時短勤務のパートだから審査が通らなかった保護者
「公式には改善されている」とされる待機児童問題ですが、現実はまだまだ解決には至っていないのです。
【課題②】保育の安心・安全が守られていない
近年、保育現場での重大事故や不適切保育が増加しています。
「令和6年教育・保育施設等における事故報告集計」の公表について
「保育所等における虐待等の不適切な 保育への対応等に関する実態調査」の 調査結果について
こうした事件や事故はすぐに全国ニュースで取り上げられるため、実感している方も多いのではないでしょうか。
この事故・事件の背景には、保育士の深刻な疲弊があるのではと感じています。
⚠️わたし自身もそうでした。
シフト時間は保育に入り、事務作業はシフト外が当たり前
残業・持ち帰りも日常
保育の質向上へのプレッシャー
急な変更への対応
人手不足による長時間勤務と業務負担の増加
こうした状況が積み重なり、疲労とストレスが限界に達すると、心が正常に働かなくなります。気持ちが追いつかず、余裕がなくなってしまう…。
その結果として、取り返しのつかない事態が起きてしまうのです。
【課題③】子ども一人ひとりに目が届かない
2024年度から、保育士の配置基準が見直されましたよね。

でも保育施設によっては、「1,2歳児クラスは子ども6人対保育士1人」のまま。子ども12人のクラスだと保育士2人配置です。
子ども12人を保育士2人で、本当に見切れるのか…。
子ども一人ひとりに、十分に目を向けられるのか…。
現場にいた身として、どうしても疑問が残ります。
⚠️わたしの担任していた1歳児クラスは、子どもが21人に対して保育士が5人。
(同じような園もあるのではないでしょうか。)
21人を ❝見切る❞ こと自体は、
役割分担・チームワーク・動線作り・点呼・子どもを惹きつける保育力、これらが嚙み合えばなんとか成立します。
ただ、どうしても難しかったのが「個々を見ること」。
一人ひとりに目が行き届かず、気づかないうちに怪我や噛みつき、顔に大きなひっかき傷を負わしてしまったこともありました。
全国ニュースではプール事故、バスの置き去り、行方不明などの痛ましい事故が取り上げられています。
要因はさまざまですが、根底にあるのは、「子ども一人ひとりに目が行き届いていない」現状ではないでしょうか。
保育の課題を解決するためにー現場から考える3つのアプローチ

では、これらの課題を解決するためにはどうすることが正解なのか。現場で働くわたしたちができることは何なのか。
ここからは、わたし自身の考えをお伝えしていきます。賛否あるかもしれませんが、あなたもぜひ一緒に考えてみてください。
適切な人数配置基準を現場から追究する
あなたは、そのクラスに保育士が何人いれば、子ども一人ひとりをしっかり見られると思いますか?
☝️保育士歴15年のわたしの場合
1歳児クラスなら8~10人の子どもたちを2人で見るのが、個々を把握しやすいと感じています。
さらに言えば、トイレ、給食準備、給食から午睡への移行、起床時など、部分的にもう1人ついてほしい。
でも、保育室に常に3人以上いると、今度は動きづらく感じます。
ただ、この ❝適正人数❞は、先生によって違うはずです。2~3人を見るだけで精一杯という保育士さんもいれば、5人程度なら余裕という保育士さんもいるでしょう。
多くの保育士さんが納得できる ❝適正な人数配置❞ とは、どこなのか。それを追求できるのは、現場を知っているわたしたち保育士なのだと思います。
保育士がスキルアップできる環境を整える
保育しやすい環境とつくるには、人数確保だけでなく保育士自身のスキル向上も欠かせません。
研修や勉強会の機会は設けられていますが、それを十分に活用できているのでしょうか。
☝️わたし自身も、
会社が申し込んだ研修には参加していましたが、自分で申し込んで参加する概念がありませんでした。(言い訳ですよね…)
朝から夕方まで保育、そこから事務作業、土日は疲れ切ってしまう…、そんな働き方では、スキルアップの時間を確保するのは難しい。
だからこそ、事務作業の見直も必要だと感じています。
例えば、書類の記載事項は本当に全て必要なのか。後から見返すことのない書類もあります。
現場では本当に必要な書類だけを整理し、保育士に「空白の時間」をつくること。そして、職場でセミナーのアーカイブ動画を気軽に視聴できる環境も必要だと思います。
つながりを作り、社会を動かしていく
トークセッションで加藤繫美先生がおっしゃっていたのは、地域ごとに保育関係者が集まり、課題を話し合う場をつくることが必要なのでは、ということでした。
話し合う中から打開策やアイデアが生まれ、自治体を動かすきっかけになるかもしれない。園内で解決できることが、見つかる可能性もあります。
さらに、保育士と高校生・大学生が交流する機会を作ることも大切。
高校生の保育ボランティア、大学生のアルバイトの受け入れ
こうした取り組みを可視化し、次世代の保育士を育てる土壌を作っていくことも、保育の未来への投資になるのではないでしょうか。
まとめ|保育の未来を変えるのは、現場のわたしたち

保育が抱える課題は、一朝一夕で解決できるものではありません。
待機児童問題・重大事故・不適切保育・配置基準の不足…、どれも長年放置されてきた、根深い問題です。
でも、「困っている」「何とかして」と訴えるだけでは、何も変わらない。だからこそ、現場を知っているわたしたち保育士が動く必要があるのではないでしょうか。
- 適切な配置基準を現場から追究すること
- 事務作業を見直し、スキルアップできる環境を整えること
- 地域でつながり、次世代の保育士を育てていくこと
今からでも始められることは、きっとあります。
保育は、少子化・ジェンダーギャップ・貧困格差…、日本社会が抱える課題と深くつながっています。保育がなくなれば、社会そのものが立ち行かなくなる。それほど重要な仕事です。
保育の未来を明るくするために、まず一歩。あなたの園から、あなた自身から、できることを一緒に考えてみませんか?
この記事を読んで、少しでも「一緒に考えたい」と思っていただけたなら、とても嬉しいです。


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