【年齢別】保育園での食育と給食指導のコツ

【年齢別】保育園での食育と給食指導のコツ


「食べ物を大切にしてほしい」

「好き嫌いをなくして、食事を楽しんでもらいたい」



そんな思いを抱えている保育士さんも多いのではないでしょうか。
日々の給食時間は、ただ栄養を摂るだけでなく、子どもたちの「生きる力」を育む大切な食育
の機会です。



この記事では、食育の目標から給食指導の年齢別のねらい、そして私が実践していきた具体的な
給食援助のアイデアまで、幅広くご紹介します。






厚生労働省の『保育所における食育に関する指針』では、食育の目標を

「現在を最もよく生き、かつ、生涯にわたって健康で質の高い生活を送る基本としての『食を営む力』の育成に向け、その基礎を培うこと」

引用:厚生労働省 『保育所における食育に関する指針』(概要)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf


と定めています。


保育所における食育は、子どもたちが「楽しく食べる」ことを期待し、以下の5つの子どもの
姿の実現を目指して行われます。

①お腹がすくリズムのもてる子ども

②食べたいもの、好きなものが増える子ども

③一緒に食べたい人がいる子ども

④食事作り、準備にかかわる子ども

⑤食べ物を話題にする子ども

引用:厚生労働省 『保育所における食育に関する指針』(概要)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0604-2k.pdf



これらの目標を念頭に置くことで、日々の食育指導がより意味深いものになります。




子どもの発達段階に応じて、給食指導のねらいも変化していきます。




0~1歳児クラスの食育では、

  • 信頼できる環境で安心な食体験
  • 食への喜びと自発的な関わり
  • 五感を使った食への探求心


上記の3つの側面から子どもたちの成長を支えます。



子どもたちが安心して授乳ができるよう、保育士は穏やかで信頼できる関係性を築き、心地よい雰囲気の中で食事ができるよう環境を提供します。

これにより、食べる行為自体がポジティブな経験となるよう促します。



空腹を感じ、ミルク、離乳食、そして通常の食事を「美味しい」「楽しい」ものとして、積極的に受け入れることを目指します。

食事が心身の満足につながる経験となるようサポートし、食べる喜びを育みます。



多様な食材を「見る」「触れる」「味わう」といった五感を通した経験を重ねることで、食への
好奇心を刺激します。

こうした体験を通して、子どもが「もっと食べたい」「自分でやってみたい」という意欲を自然と育めるよう働きかけます。




2歳児の食育は、

  • 多様な食体験を通じた味覚の発達
  • 食習慣の基礎と自立への関心
  • 共有する喜びを知る食卓の経験


以上の3点に焦点を当てて、子どもたちの成長をサポートします。



さまざまな食材や調理法に触れる機会を提供し、多様な味や香りを体験することで、子どもたちの味覚幅を広げます。

これにより、食への好奇心を刺激し、偏食を軽減します。



食事の準備や片づけ、正しい姿勢で食べることなど、食に関する基本的な習慣やマナーに興味を
持つように促します。

保育士が手本となり、子どもたち自ら食と向き合う態度を育んていきます。


共有する喜びを知る食卓の経験


保育士が架け橋となり、友だちと一緒に食事をする楽しさを経験できるよう支援します。
食卓でのコミュニケーションを通じて、共食の喜びや社会性を自然と育む大切な時間と位置付け
ます。




幼児期の食育は、

  • 食に関する知識とバランス感覚の習得
  • 自立と共食の喜びの体験
  • 適切な食習慣とマナーの定着
  • 旬と文化への興味喚起
  • 生命への感謝と食への意識


以上の5点を目標を設定し、子どもたちの主体的な食への関わりを促します。


食に関する知識とバランス感覚の習得


食べ物の種類や体への役割を学び、栄養バランスの取れた食事の重要性を理解するきっかけを作ります。

これにより、健康的な食生活を送るための基礎的な知識を育みます。


自立と共食の喜びの体験


自分で食事ができることの喜びを感じ、身近な人と一緒に食べる楽しさを分かち合う経験を重視します。

食卓での豊かな交流を通じて、コミュニケーション能力と社会性を養います。


適切な食習慣とマナーの定着


食事のマナーや準備、片づけといった基本的な食習慣を身につけるように促します。
日常生活の中で自然と実践することで、自律的な行動力を育みます。


旬と文化への興味喚起


季節ごとの旬の食材や地域の食文化に触れる機会を提供し、食への興味や親しみを深めます。
食べ物を取り巻く背景への理解を促します。


生命への感謝と食への意識


栽培体験や調理体験を通じて、食べ物が「いのち」であること、そして多くの人の手が加わって
いることを学びます。

これにより、食べ物やそれに関わる人々への感謝の心を育みます。




給食に対する考え方や取り組み方は園によって様々ですが、

わたしは「調理してくれた人、食材を作った人、その食材の命」への感謝の気持ちを大切に
しています。

そのため、苦手なものでも一口は頑張って食べてほしい、という思いで子どもと向き合って
きました。

賛否両論あるかもしれませんが、わたしが実践してきた援助方法をご紹介します。




0~1歳児の援助では、

  • 「隠し技」で1口チャレンジ!
  • 遊び心で食事を楽しく
  • 褒め言葉で意欲アップ!
  • 苦手な食べ物、飽き具合を把握する
  • 「大切に食べる」を伝える
  • 清潔な環境を保つ


以上の6点を意識して取り組んできました。


「隠し技」で1口チャレンジ!


好きなおかずの下に苦手なものを少量隠して食べさせてみました。

ほとんどの子は気づかずに食べましたが、中には気づいて出してしまう子もいました。
その場合でも、「バレちゃったか!」という気持ちで、責めることはしませんでした。


遊び心で食事を楽しく


「くるくるくる、あ~ん」など、楽しい声かけを食べさせてみます。

「あっ!あそこでアンパンマン見てるよ」
「アンパンマン見ててね、いくよ、あーん」

などと、意欲につながる声かけもしています。


褒め言葉で意欲アップ!


「おいしいね」
「食べられたね、えらいね」

など、褒めて自信をつけさせます。


苦手な食べ物、飽き具合を把握する


一人ひとりの好みや食事の進み具合を把握し、配膳時に、苦手なものを1~2口程度に減らすなど、工夫を凝らします。


「大切に食べる」を伝える


食べ遊びを始めたら「大事だよ」と優しく声をかけ、手から食べ物をそっと離すようにします。

また、食べ遊び対策として、手づかみできるものを手前に、こぼされたら困るものは後方にと、
おかずの位置を移動する場合もありました。


清潔な環境を保つ


床や机に落ちた食べ物はその都度ティッシュなどで集め、子どもの視界に入らないようにし、
清潔感を保ち、食への意識を促します。




2~3歳児では、

  • 達成感を促す声かけ
  • 共感と励ましの言葉かけ
  • 完食と努力を大いに褒める


以上の3点を意識して援助していました。


達成感を促す声かけ


「あとこれだけ食べられたら終わりだよ」
「今日のデザートは○○だよ」

など、具体的な目標や楽しみを提示します。


共感と励ましの言葉かけ


「○○おいしいよね。先生好きなんだ」
「先生の好きな~(苦手な野菜)だ!みんなは食べられるかな?」

と、挑戦を促します。



完食できた時だけでなく、苦手なものを少しでも頑張って食べられたことを大いに褒めます。




4~5歳児では、

  • 食べる前の声かけで意識づけ
  • 食べ方のヒントを提案
  • 「命」と「感謝」を伝える
  • 食べ物の「効果」を伝える
  • 苦手なものも「これだけ」と目標設定


以上の5点を意識していました。



「いただきます」の前に、
「〇〇と〇〇食べられるかな〜?先生大好きなんだ!」

などと声かけをし、食べ物への関心を高めます。



「もし○○が苦手な子は、お肉のソースを少しつけて食べてみてね。」
「(味が濃い)おかずと一緒に食べると食べやすいよ」

と、食べやすくするための具体的な提案をします。

※お行儀があまり良くない印象がある為、園によってはNGの場合もあるかもしれません。


「命」と「感謝」を伝える


調理してくれた人や、命をいただいていること、食材を作ってくれている人がいることを、子どもに分かりやすく説明します。

「だから、少しでも食べてみてね」
と付け加えることで、食べる意味を伝えます。


食べ物の「効果」を伝える


「○○を食べるとパパみたいに強くなれるんだよ」
「○○を食べるとプリンセスみたいにお肌ツヤツヤになるんだよ」

など、子どもが興味を持つような形で、食べ物の良い効果を伝えます。


苦手なものも「これだけ」と目標設定


苦手な食べ物でも「これだけは頑張る」という具体的な目標を一緒に決め、達成できた時や
頑張ったことを十分に褒めます。




今回は、わたし自身の考え方と具体的な援助方法をご紹介しました。
「えっ、でもさ~」と感じる部分もあったかもしれません。


しかし、共通して言えることは、以下のことを子どもに伝えることです。


  • 「美味しかった!」と感じてもらうこと
  • 食欲が満たされること
  • 友だちと楽しく過ごせること
  • 食べ物の役割を知ってもらうこと



これからの目標に向かて、先生方の思いが実現するような、有意義な給食時間をぜひ作って
いきましょう。


 


 




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