表現あそびは、子どもたちの「やりたい!」「伝えたい!」という気持ちを大きく育てる
大切な活動です。
しかし、
「これでいいのかな?」
「どう関わればいいのか分からない」
そう悩む保育士さんもいるかもしれません。表現あそびは、ただ遊ばせるだけでなく、保育士
の関わり方ひとつで子どもの成長が大きく変わるといえます。
この記事では、忙しい現場の先生でもすぐに実践できるような、表現あそびの基本の
「ねらい」の解説と、遊びのアイデア、援助の具体的なコツをご紹介します!
この記事を読んで、子どもたちが自信を持って、のびのびと自分を表現できる楽しい保育を
目指しましょう。
表現あそびってなに?(遊びの定義と重要性)

表現あそびとは、子どもが感じた「楽しい!」「不思議!」といった気持ちや、頭に浮かんだ
イメージを、体や言葉、絵、物など、自分の得意な方法で表現して楽しむ活動のことです。
これは、ただの「時間つぶしの遊び」ではありません。
五感をフルに使って世界を体験し、「これがわたし!」という自分らしさを発見していく、とても重要なプロセスなんです。
表現あそびのねらいとその効果とは

表現あそびは、保育の5つの領域のうち「表現」の分野にあたり、次の3つの力が大きく
伸ばすことが期待されています。
- 感じる力を育む
- 想像力と創造力を高める
- 自己肯定感を養う
感じる力を育む
「きれいだな」
「面白い音だな」と、
子どもが自然や日常の中で心が動いたとき、それを絵に描いたり、遊びで表したりすることで、「感じる力(感性)」がもっと深まります。
感動を表現に変えることで、心が満たされていく効果もあります。
想像力と創造力を高める
「空を飛ぶゾウさんを描いてみよう」
「虹色のケーキを作りたいな」
そういった頭の中のイメージを、どうしたら形にできるだろう?と考える過程が、新しいアイデアを生み出す力(想像力と創造力)を育てます。
自己肯定感を養う
「すごくいいね!」
「面白い動きだね!」と、自分で考えて表現したものを、先生や友だちに受け止めてもらえると、
「わたしの表現は素晴らしいんだ」と、子どもは感じます。
これが「自分はこれでいいんだ」という自己肯定感につながり、次に挑戦する意欲が湧いてき
ます。
保育士が意識すべき援助とは

表現あそびを充実させるためには、先生の関わり方が非常に重要です。ここでは、特に意識
してほしい3つのコツを紹介します。
- 多様な素材を「どうぞ!」と提供する
- 結果ではなく「やってみたこと」を褒める
- 遊びと遊びと「つなげる」工夫をする
【環境】多様な素材を「どうぞ!」と提供する
色々な素材に触れることで、表現の幅が広がります。クレヨン、絵具、粘土、段ボール、新聞、布、季節の自然物などなど、さまざまな素材を使った活動を定期的に取り入れましょう。
「ここでは自由にやっていいんだよ」と、服が汚れることを気にせず、大きな声や音を注意される心配もないという安心感を与えましょう。
【関わり】結果ではなく「やってみたこと」を褒める
「このギザギザの線は、○○なんだね」
「何回も挑戦して、ここまで高くジャンプできたね」など、
絵の上手さや、動きの正確さではなく、子どもの気持ちややってみた部分に注目して声をかけ
ましょう。
「そうか、○○ちゃんはそんな気持ちだったんだね」と、子どもの表現に寄り添い、
「その気持ちを、もっと大きな動きで表現してみない?」などと問いかけ、遊びを深めるヒントを与えましょう。
【発展】遊びと遊びを「つなげる」工夫をする
「△△ちゃんの絵は、今日出会ったダンゴムシさんを描いたんだね」
「こんな面白い発想もあるんだね」などと、
先生が橋渡し役になって、友だちの表現にも関心がもてるように促しましょう。
「昨日の思い出をごっこ遊びにしてみたんだね」
「遠足で拾った葉っぱを、ここに貼ってみようか」など、
過去の体験や別の活動と結びつけて、イメージを広げられるようにしましょう。
年齢別で見る表現あそびの関わり方

子どもの成長に合わせて、先生の関り方も変えていくと、表現あそびはより楽しくなります。
【0,1歳児】五感と心地よさを楽しむ時期
【ねらい】
〇触れる、聞く、見るといった五感でさまざまな刺激を受け取り、心地よさや楽しさを味わう
〇先生の真似をしながら表現の基礎を経験する
【ポイント】
〇「感触」を最優先で提供しよう
泥、水、小麦粉粘土、新聞など、安全に手で触って楽しめる遊びをたくさん取り入れましょう。
〇気持ちを「代弁」してあげよう
「冷たいね」「サラサラだね」など、子どもが言葉にできない感覚や気持ちを先生が言葉に
してあげることで、表現と気持ちが結びつきます。
【2,3歳児】自己主張と模倣あそびが盛んな時期
【ねらい】
〇身近なものの模倣を通して、簡単な「ごっこ遊び」を楽しむ
〇自分のしたいことや気持ちを体全体で表現する楽しさを知る
【ポイント】
〇言葉と動きを結びつけよう
「ブーンと飛んでいるね」「怒っているお顔だね」など、子どもの表現を具体的な言葉で
受け止め、語彙を増やしながらイメージを広げられるようにします。
〇模倣を深める小道具を用意しよう
エプロンや鍋、お面など、簡単な小道具をそばに置くことで、ごっこ遊びや模倣への意欲を自然と引き出しましょう。
【4,5歳児】イメージ共有と共同的な創造性を深める時期
【ねらい】
〇友だちと協力し、共通のイメージをもって表現を深める
〇表現方法を工夫し、一つのものを作り上げる達成感を味わう
【ポイント】
〇遊びの「テーマ」を一緒に決める手助けをしよう
「どんなお話にしようか?」「どんな役が必要かな?」と、劇遊びやごっこ遊びの前には、
イメージを共有できるようにサポートします。
〇どんな役割も尊重しよう
役になりきる子だけでなく、お面を作る子、背景を描く子など、子どもそれぞれの役割も表現
の一部と認め、尊重しましょう。
表現あそびのアイデアを種類別に紹介します!

私が現場で取り入れていた遊びのアイデアを、3つの種類に分けてお伝えします。どれもわたしが、1歳児クラスで実践していた遊びです。ぜひ参考にしてみて下さい。
楽器あそび:鈴、タンバリン
【ねらい】
〇先生の真似をして、楽器を鳴らしてみようとする
〇楽器を鳴らしながら、歌を唄う楽しさを味わう
【遊び方】
①タンバリンでお返事あそびをする
先生は「みみちゃん」とタンバリンを打ちながら名前を呼び、子どもの前にタンバリンを出す。
子どもは「は・あ・い」(パン・パン・パン)とタンバリンを打って返事をする。
②楽器をもらう
補助の先生に楽器を配ってもらう。子どもが楽器をもらい始めたら、進行役の先生は楽器を鳴らし始める。
③先生の真似をして楽器を鳴らす
「ジャラジャラ(鳴らして)~止める」
「よこー(体の横で鳴らす)、うえー、したー」
「おなかおなかおなかだよ♪おなかだよ」(お腹で楽器を鳴らす)
「あしあしあーしだよ♪あーしだよ」(足で楽器を鳴らす)
さまざまな打ち方をテンポよく進めていく。
④季節の歌を唄いながら楽器を鳴らす
その月の歌を唄いながら楽器を鳴らします。楽器の鳴らし方は、子どもが真似できるように先生が決めて見せる。
感触あそび:多様な素材
さまざまな素材を使った遊びのアイデアを紹介していきます。
- 模造紙(大きな紙)にたくさんお絵かきしよう
- 段ボール箱で自由に遊ぼう
- 新聞プールあそび
- スズランテープ+コップ&スプーン
- 牛乳パックつみき
- S字フックあそび
- カラーポリ風船
- 素材にお絵かき(段ボールやプチプチ、アルミホイルなど)
- トイレットペーパーで思いっきり遊ぼう
- 素材でままごとあそび(毛糸、キャップ、梱包材など)
- 本物の野菜でままごとあそび!
- 自然物でままごとあそび(落ち葉やどんぐりなど)
- 水で窓ガラスに紙をくっつけよう
- 毛糸で水あそび
模倣あそび
模倣あそびでは、5つの遊びをご紹介します。
①まねっこあそび(身近なもの)


②先生のまねっこあそび
「まねっこピーナッツ」という歌を使います。
YouTubeやTikTokに映像が出ているので、見てもらいたいです。また、AppleMusicに音源
もありましたので、手に入れることができると思います。
歌の中に、まねっこピーナッツの言葉かけがあります。基本的には、その言葉かけ通りに遊ぶだけです。
「まねまねまねっこピーナッツ」の合図で、先生は全身を使ってポーズを決めて下さい。
それを見て、子どもが真似をして遊びます。
始めは簡単なポーズで、だんだんと難しくしていくのがおススメです。
その他の動きについては、映像を確認してみて下さい。
③お散歩していたら...

④大きくなって小さくなって
「おおきくなってー」で体を大きくし、
「小さくなってー」で体を小さくする遊びです。
「小さくなったまま、前に歩くよ」
「大きくなったまま回るよ」と、動きに変化をつけてみたり
みんなで手をつなぎ、輪になってやってみたり。
みんなで手をつないだまま、しゃがむ立ち上がる、もしくは前進や後退で、大きい小さいを
表現します。その際には、必ず約束事を伝えること、先生の配置場所を考慮する必要があり
でしょう。
⑤消防車(救急車)になりきって!

※実は、『しょうぼうしゃがはしります』の楽譜は、どこを探しても見つかりませんでした。そこで、わたし自身で楽譜を作りました。

「ほしい!」
「気になる!」という方は、以下のURLからお渡ししております。
https://psa80ebfcq0zsrvjlwga.stores.jp/items/68e78f70f0ab5a0048acd1fe
また、遊びのアイデアを詳しく閲覧したい方は、以下のページへ移動してください。

表現あそびで子どもが困ったときの対処法

Q:「やりたくない」と拒否する子への対応は?
A:無理に誘わず、「見学」という方法を提案してみましょう。
強制する必要はありません。
「お友だちの様子を見てみて、最後に先生と少しだけやってみようか」
「先生触ってみるから、見ててね」などと、
活動に間接的に関わるきっかけを作ります。先生や周りの子が楽しく取り組む様子を見ている
うちに、「やってみようかな」という気持ちが自然を湧くのを待ちましょう。
Q:表現が苦手な子に自信を持たせるには?
A:その子の「小さな工夫」を具体的な言葉で認めましょう。
「この折り紙の色をこんな風に重ねたんだね、すごくきれいだよ」
「粘土の形をこんなにしっかり丸められるようになったんだ!」など、
客観的に見て認められる行動を具体的に褒めます。
「さっきの動き、先生はすごくかっこいいと思ったよ」と、他の子の見ていないところでこっそりと、伝えてあげることも効果的です。
まとめ

この記事では、保育 表現遊びのねらいと種類、そして実践すべき援助のポイントをまとめました。
表現あそびは、子どもたちの「自分を信じる力」と「生きていく力」の土台を育む、
かけがえのない時間です。
「これをやらせなきゃ」ではなく、
「この子のやりたい気持ちをどう引き出そう?」という視点で、子どもたちの表現を温かく
見守り、適切な一言をかけてあげてください。
本記事でご紹介したポイントを参考に、子どもたちがのびのびと輝く表現活動を、ぜひ楽しん
でくださいね!
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