「避難訓練って、本当にこれで大丈夫かな…?」
「子どもたちにはどう声かけをしたらいいの?」
保育園の避難訓練は、子どもたちの命を守るための最も重要な活動の1つです。当たり前のことの
ように思えても、日々の訓練をただこなすだけでは、いざという時に冷静に対応できないかも
しれません。
この記事では、避難訓練を行う上で知っておくべきねらいとポイント、そして年齢別の子どもへの具体的な声かけについて、私の経験を交えながら詳しく解説します。
保育園の避難訓練|子どもの安全を守る3つのねらい

避難訓練は、子どもと保育士、双方にとって大切な目的があります。
それが以下の3つです。
- 子どもの命を守るため
- 保育士の判断力を養うため
- スムーズな情報共有のため
子どもの命を守るため
どのような状況でも保育士の話を聞き、安全に避難できるように、適切な行動を身につけます。
また、園以外での場所で被災した際にも、冷静に行動するための方法を学びます。
「おかしもち」という合言葉を知っていますか?
お | おさない(押さない) |
か | かけない(走らない) |
し | しゃべらない |
も | もどらない(戻らない) |
ち | ちかづかない(近づかない) |
この合言葉は、阪神・淡路大震災の後に広まり、パニックにならず安全に避難できるように
考えられたものです。命を守るための行動として、伝えていきたいですね。
保育士の判断力を養うため
震災時に慌てず、適切な指示を出し、子どもを確実に避難させるためのシミュレーションを行い
ます。訓練後には振り返りをすることで、課題を見つけ、改善策を検討します。
避難訓練は、子どもが学ぶためももちろんですが、それよりも保育士が確実に動けるようにする
ための練習だと認識しましょう。
スムーズな情報共有のため
緊急時に保護者とスムーズに情報を共有し、連携できる体制を整えます。
避難訓練の事前準備|3つのチェックリスト

避難訓練を実施する前には、以下の3点を確認しておきましょう。
- 避難袋の中身を確認する
- 避難経路を妨げているものはないか
- 担任同士での打ち合わせ
避難袋の中身を確認する
「緊急時持ち出し袋」の中身の確認は定期的にしていますか?
わたしの場合は、なかなかできませんでした。気がついたら、名簿が古いままだったり、応急品の使用期限が過ぎていたり…。
そんなことが無いためにも、避難訓練という日を活用し、確認することをおススメします。
【緊急時持ち出し袋の中身】
ウェットティッシュ | 哺乳瓶 | 液体ミルク |
ミネラルウォーター | お菓子 | おむつ/おしり拭き |
におわないおむつ袋 | 簡易トイレ | おんぶ紐 |
長袖・長ズボン | 下着 | バスタオル |
マスク | 懐中電灯 | ホイッスル |
救急用品 | 携帯用カイロ | ヘルメット/防災頭巾 |
携帯用ラジオ | 携帯の充電器 | 乾電池 |
ビニール袋 | ガムテープ/マジックペン | |
防災ハザードマップ | 児童名簿 | 関係機関一覧表 |
避難経路を妨げているものはないか
保育室や廊下など、避難経路となる場所に物が置いていないかを確認しましょう。
【チェックポイント】
出入り口に、製作物やロッカーなどがはみ出ていないか |
避難経路の窓やドアがスムーズに開けられるか |
窓やドアの前に物が置いている状態ではないか |
これらの確認も、日ごろから意識的にするべきでしたが、やらずに過ぎていき、監査や来客がある際に、慌てて整理をしていました。
そうではありませんよね…。反省です。
担任同士での打ち合わせ
訓練が始まる前には、クラス担任同士で簡単な打ち合わせをしておきましょう。
【確認事項】
今回の訓練の想定(火災なのか、地震なのか、不審者なのかなど) |
各自の役割(窓やドアの開閉担当、消灯担当、点呼をする人など) |
避難場所(どこからどうやってどこに避難するのか) |
事前に役割分担を共有しておくことで、訓練中に先生が戸惑うことなく、スムーズに子どもたちを避難させることができます。
避難訓練を効果的に行うための4つのポイント

避難訓練を「ただのルーティン」にせず、有事に備えるための効果的なポイントをご紹介します。
- 「避難時にやるべきこと」は全員が把握する
- 震災時を想した訓練ができるように
- 先生の役割を固定化し、連携をスムーズに
- 訓練後には振り返りで課題を共有する
「避難時にやるべきこと」は全員が把握する
毎月行われる避難訓練(地震、火災、防犯)では、やらなくてはいけないことが決まっています。
【例えば】
- 地震の際は、ドアや窓を開ける(避難経路確保のため)
- 電気を消す(通電火災を防ぐため)
- 名簿や避難袋を持つ
- 散歩カーの準備と誘導
これらの役割は、リーダーが指示してくれるから、教えてくれるからではなく、先生全員が把握
していることが重要です。
誰が欠けてもスムーズに子どもを避難させられるよう、普段から全員で確認し合いましょう。
震災時を想定した訓練ができるように
実は、わたしの勤めていた園で、こんなことがありました。
訓練が始まる前に、散歩カーを所定の位置に動かしたり、避難袋や名簿を取りやすい位置に移動
させたり…。
震災は、前もって知らせてはくれませんよね。
それらを移動させる、持ってくるタイミングも、避難訓練の計画内に含めておくことが
重要ですよね。
いざとなった際にするべきことを、避難訓練の日に練習をしておくべきたと考えます。
役割を固定化し、連携をスムーズに
避難時の役割をあらかじめ決めておくと、いざという時に迷わず動けます。わたしの場合は、
以下の通りで役割を決めていました。
リーダー | 子どもを集める 点呼をする |
サブリーダー | リーダーの周りに子どもを集める |
3番手の先生 | 子どもを集める 名簿や避難袋を持つ |
4番手の先生 | 窓の開閉、散歩カー準備 |
5番手の先生 | 電気の消灯、散歩カーの準備 |
リーダーが不在の場合は、サブリーダーが代わりを務めます。3番手の先生が不在の場合は、サブリーダーが代行するなど。
その時の状況に応じて、誰が代行するべきなのかも想定して、訓練しておくと安心です。
訓練後は振り返りで課題を共有する
訓練が終わったら、それで終わりではありません。避難がより確実となるように、必ず振り返りを行いましょう。
良かった点を共有し、褒め合ったり、役割分担のあいまいさやつまずいた点を共有したりし、次に活かすこと。
振り返りを通して、先生一人ひとりの当事者意識を高め、チームとして一体感を強めることが
できます。
【年齢別】避難訓練での声かけと対応方法

子どもたちの年齢や発達段階に合わせた声かけをすることで、避難訓練のねらいをより効果的に
達成できます。
- 0~1歳児クラス
- 2~3歳児クラス
- 4~5歳児クラス
各年齢別に説明していきます。
0~1歳児クラス:安心感を最優先に
この年齢の子どもたちには、何より安心感を与えることが大切です。
【訓練前】
「今日は、じしんって言って、お部屋がグラグラした時の避難訓練をするよ」と、優しく簡潔に
伝えます。
【訓練中】
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と、小さな声で安心できるような言葉かけをします。
わたしの場合は、「キラキラぼし」などのゆったりした歌を、小さな声で唄っていたことも。
賛否あるかもしれませんね。
【注意点】
泣いてしまう子や輪から出て行ってしまう子には、
「怖いね。先生ここにいるよ」と気持ちに寄り添い、優しく誘導しましょう。
【避難後】
「えらじゃったね。みんなで逃げられたね」と、結果をしっかり褒めてあげます。
2~3歳児クラス:約束事と理由を伝える
この時期からは、簡単な約束事を言葉で伝えていくことも大切です。
【訓練前】
「「地震です」と聞こえたら、先生の集まってね」
「集まったら、身体を小さくして頭を守るよ」と、身振り手振りを交えて説明します。
【約束事】
「おしゃべりしないよ、放送が聞こえなくなるからね」
「走らないよ、お友だちとぶつかって怪我しちゃうからね」などと、理由を添えて分かりやすく
伝えましょう。
【訓練中】
「しーだよ…そう!じょうずだね」
「頭小さくだよ」などと、冷静に、小さな声で指示を出します。
【避難後】
「みんな、静かにできたね」
「先生のお話を聞いて、避難できたね」と、具体的な行動を褒めることで、子どもたちの自信に
つながります。
4~5歳児クラス:主体的に考えさせる
この年齢になると、自分で考え、行動できるような声かけが大切です。
【訓練前】
「地震が来たらどうするんだっけ?」と、子どもたちに質問し、答えを引き出します。
【約束事の確認】
「先生の周りに集まる」「静かにする」「走らない、押さない」など、子どもたちと一緒に約束事を確認しましょう。
【訓練中】
「ここに集まっておいで」
「お荷物持ってくるね。そのままだよ」と、先生は手早く自分の役割をこなします。
【避難後】
2~3歳児クラス同様、避難時にできたことを十分に褒め、いざという時の避難方法を再確認
しましょう。
まとめ|当事者意識をもって避難訓練に取り組もう

避難訓練は、子どもたちの命を守るために、全員が当事者意識をもって取り組むべき活動です。
先生一人ひとりが自分の役割を正確に理解し、冷静に行動することが何よりも重要だと考えます。
日ごろから「何のために避難訓練をするのか」を全員が共有し、一つ一つの訓練を真剣に行う
ことで、いざという時に子どもたちを安全に守れるようになります。
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