ADHDのある子への保育


今回は、『ADHA』について

深掘りしていきます。



「少しもじっとしていられなくて

 どう対応したらいいのか分からない」

「友だちとのトラブルが絶えなくて、

 どう援助をしたらいいのか悩んでる」



そう感じている先生は少なくないのでは

ないかと思います。


わたし自身も、

個別の援助が必要な子と向き合い、

その子へのかかわり方を試行錯誤してきました。


この記事では、

わたしの実体験を含めながら、

具体的なかかわり方やヒントをお伝えします。



ADHDへの理解を深め、

その子に合った保育を見つける

ヒントになってくれたら嬉しいです。


ADHDとは?




『ADHD』とは、

Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder

の頭文字をとってもので、



日本語では、『注意欠如・多動症』

または、『注意欠如・多動性障害』

と翻訳されます。



年齢や発達に不釣り合いな

不注意さ、衝動性、多動性を

特徴とする発達障がいの1つです。



必ずしも、

3つの特性すべてが現れるのではなく、

不注意だけが目立つ子

多動性や衝動性が目立つ子

というように特性はさまざまです。



ADHDの診断は、ご存じだと思いますが、

専門医が行うものですが、



わたしたち保育士は日々のかかわりの中で、

その子の特性を正しく理解し、

適切なかかわり方をするのがとても重要です。



ADHDの特性は、その子の個性として

素晴らしい一面を持ち合わせていますが、



同時に、日常生活や集団生活に

困難が生じる原因となることがあります。



度を越えて、生活に支障をきたしたり、

集団に適応できなかったりし、
理解されにくく、誤解されやすい...



だからこそ、

身近な存在である保育士が

その子自身の特性を正しく理解し、

受け止める必要があると思います。




特性とは?





特性についてお話します。

不注意の特性は、以下のような

行動となって現れることが多いです。



〇不注意




気が散りやすく集中力が続きにくい、

また忘れっぽいといった姿として見られます。


・長い時間、1つのことに集中できない

・気が散りやすい

・集中しすぎて、切り替えが難しい

 途中でやめることが難しい

・話しかられても気づかない

 話を聞いていないように見える
・うわの空で

 ボーっとしているように見える

・忘れ物、失くしものが多い

・言われたこと、約束を忘れる

・同じミスを繰り返す

・整理整頓、片づけが苦手



〈具体例〉

片づけをしようと始めても、

そこにある絵本に読みふけってしまう

虫が飛んできた、ということに反応して

その場を離れてしまう


面と向かって話していても、

聞いていないように見える


などといった行動が見られます。



〇多動性


じっとしているのが苦手で、

常に動き回り、落ち着きがない。

しゃべりだすと止まらないという姿も見られます。


・立ち歩いてします

・座っていられない

・座っても手足がそわそわ動く
・常に体のどこかが動いている

・気になるところへ行ってしまう

・高いところに登ったり、

 高所から跳び下りたりする

・話しだすと止まらない

・順番を抜かしてしまう

・話の内容がころころ変わる



〈具体例〉


座って話を聞いているときに、

座っていられず、立ち歩いてしまう


イスをガタガタさせるのが止まらない


「あのね…それで…そしたら…」と

話しだすと止まらなくなり、声も大きい


注意されたことをすぐに忘れて、

しゃべり出してしまう


などといった行動が見られます。



〇衝動性



感情のコントロールが難しく、

考える前に行動してしまいます。
何かをする前に、立ち止まって考えるのが苦手です。


・待つこと、我慢が苦手
・質問が終わらないうちに答える

・指名されていないのに発言する

・思い込みでしゃべってしまう
・思い通りにいかないと、

 暴れたり、乱暴したりする

・思ったらすぐに行動してしまう

・横入りしたり、

 順番が待てなかったりする

・気になったものは

 触らずにはいられない

・あそびや生活のルールが守れない

・人のものを

 勝手に取ったり使ったりする。



〈具体例〉


最後まで聞かずに、

思い込みでしゃべってしまう


ブランコの順番が待てずに

横入りしてしまう


ゲームのルールを守れずに

どんどん先に進めてしまう


友だちの使っているものを、

断りもなく取ってしまう


急に道に飛び出したり、

高いところから跳び下りたり、

危険な場所に入ったり、


カッとなった瞬間、

もう手が出てしまったり、

癇癪を自分では抑えられなかったり


などといった行動が見られます。



そのため友だちからは、「乱暴」「怖い」

「すぐキレる」「怒りっぽい」などと捉えられ、

友だち関係がうまく築けないことも多くあります。




かかわりのポイント




1、環境を整える


何をするべきかが分かりやすよう、

視覚的に示す工夫をしましょう。


例えば、
『朝のお支度を自分でして欲しい』

『片づけをしてくれない』


そんな時は、

絵や写真と文字で表示することで、

分かりやすくなります。


また、

「タオルはこの箱だよ」

「連絡帳は青いカゴだよ」など

実況中継をしながら

片づけ方を見せていくのもいいでしょう。



また、

『すぐに気が散ってしまう』

『持続できるようになってほしい』


そういう場合は、
見えるもの、聞こえる音など

周囲の刺激を減らし、

集中しやすい環境作りを心がけましょう。


例えば、
活動に必要ないものは片づける

魅力的なものは、

視界に入らないように移動させる


などといった配慮が必要です。


また、以下のような方法も効果的です。


「これから2つのお話をするよ。まず1つ目は・・・」

  ↓

「お話ちゃんと聞けたね。えらいね」

  ↓

「お外行こうか」


話す時に気が散らないような

環境の工夫も合わせると非常にいいでしょう。





2、話をわかりやすく伝える


ADHDのある子は

1つのことに集中し続けることが難しいため、


長い説明や

抽象的な言葉は避けるようにしましょう。


例えば、

「頑張って」→「あと1回だよ。頑張って」

「優しくしてね」→「よしよししてあげてね」

「ちゃんとして」→「お片づけをしたら、次の遊びをしようね」

と具体的に伝えるようにします。


また、一度に多くのことを指示せず、

言葉を短く区切り、確認しながら

話すように心がけます。



絵や写真、ジェスチャーなど

視覚的な要素も加えると

さらに分かりやすくなります。



また、その子と話をするときは、

向き合って手を握ったり、腕を触ったりして、



話し始める際は、「話をする」ことが

伝わったと確認してから

話し始めるようにして下さい。



「○○くん聞いてね」「お話するね」と

言葉をかけてもいいかもしれないですね。



3、スモールステップで


1つのことをきちんと終えてから

次に移るという体験

積み重ねることが大切です。



例えば、午睡の起床時だと、

起きたら→トイレに行く→手を洗う

布団を○○に片づける→お茶を飲む→椅子に座る 



と行動を1つずつ区切ると

わかりやすく簡単になります。



また、1つずつ終わるたびに

「できたね。えらいね。」

「OK!できたね。」と褒めることで

達成感が持てるようになります。



活動では、ちょっとの頑張りで

達成できることを目標にしましょう。



できたら褒めるが大切になるように!!



4、できたことを褒める



ちょっとしたことでも

すぐに褒めるようにしましょう。



頭をなでたり、

両手で大きな丸を作ったり、

身振りを交えて褒めたりして

あげて下さい。



「まるー!」「ピンポーン!」でも

Goodです!!



しかしながら、

褒めることが大事だと分かっていても

困った行動が目立ってしまう為、



その子のマイナス面ばかりが

見えてしまいます。



だからこそ、

改めて、その子の良いところを

ゆっくりと思い出してみて下さい。



書き出してみるのもいいでしょう。



また、届けてくれた、拾ってくれた

答えてくれたなど



褒める機会を

意図的に増やしてください。



褒めるという行為が、

先生自身の心を軽くしてくれ、

気持ちにも余裕が生まれてきます。



そうすると、

その子のプラス面や成長した面が

見えてくるようになります。



これは、わたしの実体験です。

ぜひ、参考にされてみて下さい。



5、くどくど叱らない



注意をする際には、

いちばん大切なことを端的に

伝えましょう。



遠くから大声で、ではなく、

子どもの顔を見ながら

穏やかに、落ち着いた声で

話しかけるよう心がけましょう。



イライラしたり

声を荒げたりしてはいけません。



人格を否定するような言葉もNGです。



「だめ」「何回言ったらわかるの」

「いい加減にしなさい」はNGです。



「走らないで」→「歩こうね」

「投げない」→「下に置こうね」と

肯定的な言葉で伝えることが大切です。



失敗やミスは責めるのではなく、

一緒に解決策を考える姿勢で接しましょう。



そしてもう1つ、

注意することは厳選することです。



わたしの場合は、

他者に痛いことをわざとした時、

危ないことを繰り返しした時にしました。



それ以外は、

他者に迷惑がかからなければ、

怪我に繋がらなければ、

オッケーと決めました。



許容範囲を決めておくと、

ストレスが減ります。



その子のマイナス面が減り、

プラス面が良く見えるようになります。



注意が減り、褒めることが増えます。



これも実体験です!!




友だちとのトラブルには...





「~したい」という強い思いから

衝動的に動いてしまい、

物を取ったり横入りしたり...



結果的にいじわるやわがままと

捉えられてしまいます。



カッとなると興奮を抑えられず、

手を出してしまうこともあり、



その場のルールや、かかわり方、

感情のコントロールを

教えていく必要があります。



かかわり方のヒントは...



①気持ちを受け止めてから


衝動的に行動してしまった場合、



「取っちゃダメでしょ!」

「叩いたらダメ!」と

頭ごなしに叱っても理解できません。



まずは、静かな場所に移動し、

(怒った表情はNGです。

 穏やかな表情だと安心します。)



少し落ち着いたところで、

「あのおもちゃが欲しかったね」と

その子の思いを受け止め、共感しましょう。



それにより、大人の話しが少しずつ

入っていくようになります。



気持ちを受け止めたうえで、

「でも、勝手に取ってはいけないよ」

「その行動は違うよね」 と伝えます。



そして、



「使いたいときは貸しって言うんだよ」

「お友だちがいいよって言ったら取るんだよ」

などと教えましょう。



また、

「貸してって言うときは、手を横につけるんだよ」

と教えてもいいでしょう。



気をつけることは、

相手の視点で言い聞かせようとしないことです。



まずは、気持ちを受け止めた上で、

教えてあげることが大切です。



相手の視点というのは、すぐに

理解できるものではありません。



ゆっくりでも必ず身についていくので、



根気よくくり返し伝えていってください。



②客観的に教えてあげて


「順番」「並ぶ」とは何かを教えてあげることも大切です。



並んでいる全体像を見て、

「1,2、3人並んでいるね。○○ちゃんは4番目だよ。」
「○○ちゃんは△くんの後ろだよ。」

声をかけるようにしましょう。



また割り込んでしまった場合は、

本人の気持ちを受け止めた上で、



「誰が滑り台していた?」

「並んでいたのは何人?」など、

その場の状況を振り返りながら確認しましょう。



衝動的に動いてしまう前に

声をかけることも大切です。



「並ぼうね」「順番ね」と

気づかせてあげて下さい。



わざとではないので、

状況が分かれば、待つこともできます。



そして、待ったり並んだりできたときは

しっかりと褒めてあげて下さい。



失敗しながらも、待てた経験をくり返すうちに

少しずつ身についていきます。



3、あったか言葉



まずは先生自身が

「ほめる以外の言葉はしない」

肯定的な「あったか言葉」を

日常的にたくさん使うよう意識しましょう。

例:○○ちゃんの絵じょうずだね!!

  △くんが~してくれて嬉しいね。

  ~してくれたの、ありがとう



そして、

肯定的なほめ言葉、

相手の気持ちが温かくなる言葉を

教えていくことで、



相手の気持ちに気づけるように

なっていきます。



相手を傷つける言葉を言ってしまった場合は



自分が言われたらどう思うのか、

自分の気持ちに置き換えてから



相手も同じ気持ちなんだよということを

説明していくといいでしょう。


最後に




ADHDのある子へのかかわり方、

いかがでしたか?



よく見てみると、

その子だけの特別なかかわり方ではなく、

保育士なら当たり前のかかわり方

だったと思います。



でも、衝動的に動かれてしまったり、

他の子と違うことをされてしまったりすると、




混乱してしまいますよね。



だからこそ、

ADHDのある子への

かかわり方を見返してみて、


そうだそうだ、そうだった!

なんだ、いつもやっていることだ!と



感じてもらえるだけでも

気持ちが少し軽くなると思います。



1人で抱え込まずに、

誰かを頼ってください。




まずは、身近な存在、

先輩でもOK、主任でもOK、園長でもOK



もちろん、

みみ先生でもOKです。




誰かに甘えて、

誰かと一緒に解決していきましょう。



最後までありがとうございました。



みみ🌻
















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