『子どもの育ち』を支える保育って何⁇~「はじめの100カ月」から考える、AI時代の私たちの役割~

『子どもの育ち』を支える保育って何⁇~「はじめの100カ月」から考える、AI時代の私たちの役割~


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そんな時代に、子どもたちのの育ちはどうなっていくのでしょうか❓


先日、保育・家庭教育セミナー『AI時代に生きる子どもたちに必要な保育・子育てとは』に参加してきました。

『子どもの育ち』を支える保育って何⁇~「はじめの100カ月」から考える、AI時代の私たちの役割~



日本の学校では一人一台端末が配られていますが、


その便利さと引き換えに、「学力・視力・メンタル」といった育ちへの影響も指摘されており、北欧やシンガポール、オーストラリアでは、一人一台端末の見直しに踏み切っているようなんです。


この記事では、脳科学から読み解く「子どもの育ち」と、それを支える「保育園の役割」について、セミナーの学びを交えてお話していきます。



変化の激しい令和の時代だからこそ、私たち保育士の本来の役割や、保育園の存在意義を一緒に考えていきましょう。


時代が変わっても、脳の仕組みは変わらない

時代が変わっても、脳の仕組みは変わらない



講師のお話でとても印象的だったのが、「どれだけテクノロジーが進化しても、人間の身体や脳の仕組みそのものは変わらない」という点でした。

子どもの脳は大人の脳のミニチュアではなく、根本的に異なる性質を持っています。

そして、今自分がいる環境から強くダイレクトに影響を受けながら、成長しているのです。


子どもの脳の発達と「環境」のリアル



子どもの脳は、「自分がいる環境の中で生きていくために、必要なネットワークだけを残し、使わないものは削ぎ落していく」という方法で発達していきます。

特に4歳頃と思春期は、今いる環境の影響を最も強く受けやすい時期☝️

〈例えば:2~3歳児のイヤイヤ期〉

大人を困らせる激しい反発行動も、実は脳が環境に反応し、必死に新しいことを学習している証拠(感受期)なのだそう。


脳の中で「やりたい!」「でもダメなんだ」という葛藤を繰り返すからこそ、

4歳頃になると相手の気持ちを少しずつ理解できるようになり、「かして」「いいよ」といった社会性が育っていきます。


この脳の成熟は20代前半まで続きますが、特に乳幼児期の体験が、生涯を支える強固な土台となるのです。


「はじめの100か月」の育ちビジョン

「はじめの100か月」の育ちビジョン



こうした脳科学の視点からも、今まさに国を挙げて注目されているのが、令和5年に閣議決定した『「はじめの100か月」の育ちビジョン』です。

『「はじめの100か月」の育ちビジョン』とは、

誕生前(妊娠期)から幼児期までの約100か月こそが、生涯にわたるウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に満たされ、幸せな状態)の向上に最も重要であるとし、

社会全体でこの時期の育ちを支えていこうという大切な指針。

幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なビジョン (はじめの100か月の育ちビジョン)|こども家庭庁
こども家庭庁は、こどもがまんなかの社会を実現するためにこどもの視点に立って意見を聴き、こどもにとっていちばんの利益を考え、こどもと家庭の、福祉や健康の向上を支援し、こどもの権利を守るためのこども政策に強力なリーダーシップをもって取り組みます...


今回のセミナーでは、

子どものウェルビーイングを向上させるために不可欠だとされている要素として、「社会的」なアプローチと「身体的」アプローチの2点について詳しく学ぶことができました。


【社会的アプローチ】アタッチメント(愛着)の形成



愛着は、「産んだ母親」だけとしか形成できないものではありません。

○心地よいスキンシップ
➡️身体を触れ合わせ、密に関わることで、大人の脳内に「愛おしい」「大切」という感情が芽生える

この身体的な接触にプラスして、


○五感への豊かな刺激
➡️大人の声かけ、温かい表情、匂いなどが重なったとき、子どもの脳内に「心地よい」「安心」という感覚が刻まれていく。

【身体的アプローチ】脳腸相関(脳と腸のつながり)



近年、脳科学と医学の分野で注目されているのが「脳腸相関」。脳と腸は自律神経を介して、互いにリアルタイムで情報を送りあっています。

○腸から脳への影響
➡️腸の不調(便秘や下痢など)が脳に伝わると、「不快」「不安」といった精神的ストレスに

○脳から腸への影響
➡️精神的ストレスを感じると、腸の動きが悪化し、腹痛などを誘発


このように、心と身体は密接につながっています。

最新の研究でも、ウェルビーイングの向上には「内臓(腸内環境)の健康」が不可欠であることが分かってきました。

ヒトが生涯持ち続けることになる「腸内フローラ(腸内細菌のバランス)」の基盤は、4歳頃までに決まると言われています。


調査によると、


感情のコントロール(自己抑制)が難しい子は、緑黄色野菜の摂取量が少なかったり、偏食の割合が高かったりするなど、腸内フローラの基盤が崩れている傾向があることも分かっています。

日々の「食育」やバランスの良い給食を提供することもまた、子どもの脳と心を育てる保育のとても大切な役割の一つなんだと痛感しました☝️



保育士の役割とはーー指針を「保育の形」に落とし込む

保育士の役割とはーー指針を「保育の形」に落とし込む



では、ここまでお話した「脳の発達」と「はじめの100カ月の育ちビジョン」を踏まえ、現場ではどのような保育が望ましいのでしょうか❓

セミナーでは、講師が園長を務める保育園を例に、具体的なお話をしていただきました。


保育所保育指針を、どう「保育の形」にするか



保育園の役割とは、保育所保育指針に書かれた抽象的な内容を自園でどう解釈し、日々の保育に落とし込んでいくかにあります。

例えば、指針の「第1章総則 1(3)保育の方法」には、次のよう書かれています。

ウ 子どもの発達について理解し、一人一人の発達過程に応じて保育すること。その際、子どもの個人差に十分配慮すること。

こども家庭庁「保育所保育指針解説」


「一人一人の発達過程に応じた保育」とは…、実際の現場ではどういう保育すればよいのでしょうか❓

【例えば、1歳児クラス】

「子ども5人に対して保育士1人」という配置の中で、一人ひとりの発達に応じた保育をどう実現するのか。


指針の言葉を、現場の保育の形に具体的に変えていくこと。それが、保育園の本質的な役割なのだと改めて感じました。


「主体性」って、いったい何だろう?



セミナーの中では、「主体性とは何か」という問いも触れられました。

ある保育園を視察で、

子どもたちが机の上に立って遊んでいた場面に遭遇し、

担任に「なぜ机の上で遊んでいるのか」と尋ねたところ、「子どもの主体性を尊重しているから」という回答が返ってきたと言います。


これは本当に、「主体性」なのでしょうか…❓

保育所保育指針「第1章総則 1(3)保育の方法」には、次のようにも書かれています。

エ 子どもが自発的・意欲的に関われるような環境を構成し、子どもの主体的な活動や子ども相互の関わりを大切にすること。特に、乳幼児期にふさわしい体験が得られるように、生活や遊びを通して総合的に保育すること。

こども家庭庁「保育所保育指針解説」


子どもの「主体的な活動」とは…、「乳幼児期にふさわしい体験」とは何なのか、どこまでが許容(見守り)で、どこからが「放任」になってしまうのか。

指針の言葉を丁寧に解釈することの大切さを、改めて考えさせられました。


乳児保育の「根っこ」、安心できる環境とは



さらに、指針には以下の内容も書かれています。

イ 子どもの生活のリズムを大切にし、健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境や、自己を十分に発揮できる環境を整えること。

こども家庭庁「保育所保育指針解説」



「健康、安全で情緒の安定した生活」とは、具体的にどんな環境を指すのでしょうか❓

講師は、食事の座席を例に挙げていました。

「子どもの主体性を大切にしたいから、座席は自由にしている」という保育は、子どもにとって本当に安心できる環境なのか。

いつも同じ座席だからこそ、「そこが自分の場所」だと分かって安心できるのではないだろうか。


私もその通りだと思います。

いつもの自分の席に座り、周りを見渡せば、いつもと同じ友だちがいる。その変わらない日常、見通しを持てる環境こそが、乳幼児期の「情緒の安定」に直結するんですよね☝️

【食事やおむつ替えなどの関わり】

同じ保育士(育児担当)が関わる➡️アタッチメント(愛着)が形成される➡️安心感が生まれ➡️生活習慣が身につく


「安心できる保育士がいるから、知っている日課を自発的に動くことができる」

子どもが生活リズムや動線を身体で覚えているからこそ、「給食だから、ここに座ってエプロンをつける」と自発的に動けるようになります。

つまり、保育士が生活リズムや環境をある程度きちんと整えていく(仕組みやルール作り)こそが、子どもが自発性・意欲を引き出す環境構成の本質なのだと、強く実感しました。


子どもの「自己充実感」を高める4つの環境

子どもの「自己充実感」を高める4つの環境



セミナーでは、子どもの心の根っこの育ちを支える「自己充実感(自己肯定感)」という言葉にも触れられていました。

「自己充実感(自己肯定感)」高めるための保育環境とは、

1️⃣一心不乱になって遊べる環境を用意する(右も左も、前も後も「遊ぶしかない」環境)
2️⃣無我夢中になって遊べるための設備・道具を整える
3️⃣保育士のねらいや想いを持つ(子どもに悟られないように)
4️⃣絵本や玩具、わらべうたなど、「良い文化」を取り入れる


子どもたちに選択肢を広げ、友だちや保育士と一緒に考えながら遊ぶこと。

SNSなどの外からのデジタル刺激をシャットアウトし、身体に意識を向け、無我夢中になって遊ぶこと。


それが、乳幼児期の脳の発達に必要な『リアルな体験』を生み出し、豊かな社会性の育ちにつながります。


デジタル・AI時代だからこそ、保育園でできるアプローチとは

デジタル・AI時代だからこそ、保育園でできるアプローチとは



最後に、講師の方が「デジタル・AIとの付き合い方」についても語られていました。

デジタルが悪いのではない。その内容が問題なのだ。

刺激的な動画は中毒性が高く、SNSのアルゴリズムによって、一度見ると似たような動画が連続して流れてくる。 そこが問題なのだ。


デジタルから物理的に距離を置くためには、保育園側から家庭へ働きかけることも大切だと話していました。

講師の園では、「カードゲームの貸出」を実施しているそうです。

絵本は子ども一人で完結してしまいますが、カードゲームは一人ではできませんよね☝️


「家族みんなで顔を合わせて遊ぶ時間」を園が提案することで、家庭をデジタルから自然に離す工夫ーーとても素敵なアイデアだなと感じました。


最後に

最後に



今回の記事では、あえて私自身の個人的な保育観を差し挟みませんでした。

だって、講師のお話がどれも共感できることばかりで、「本当にその通りだ」と胸を打たれる内容ばかりだったから。


子どもたちの育ちを支えるためにも、保育士それぞれが持つ保育観を共有し、すり合わせることが大切だと思います。


Zoomなどのツールを活用したり、打ち合わせの目的を明確化したりしながら、全員で話し合う時間を作る工夫をすること。

そして、お互いの想いをどう分かち合うかを試行錯誤していくことが重要です。


私たち保育士は、保護者の「共同養育者」。


だからこそ、子どもへの「願い」や「想い」のこもった保育を、自信を持って提供してほしいと思います。

子どもたちが「幸せだな」「安心するな」と感じられる、保育士の「想い」がたっぷり詰まった環境こそが、子どもの育ちにとって、生涯を支えるための土台となるのではないでしょうか。



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